擂 鉢 (すりばち) 

    萩の民具(19) 市報はぎ(平成3年)1991.12.1号掲載


     師走、市内の蒲鉾屋さんは一年で最も忙しい時期を迎える。かつての蒲鉾製造には、この擂鉢(すりばち)と連木(れんぎ ※すりこ木)とが無くてはならぬ用具であった。大きな擂鉢の中に入れた魚肉を梁(はり)から釣り下げた大きな連木ですり身にする作業は、大変な重労働だったという。
     擂鉢は、昔から変わらず家庭で使用されつづけている民具の一つである。鎌倉時代には、内側におろし目を施した擂鉢が使用され始めている。初期の擂鉢では、このおろし目が数条ずつ5から6箇所に刻まれていた。現在のように前面におろし目を施してより効率的になるのは、室町時代末から江戸時代の初め頃といわれている。この頃から、全国的に魚肉すり身を利用した蒲鉾製造が始められるようである。
     擂鉢のことを当地方ではカガチという。九州地方では、カガツと呼ぶところも多い。陶器産地名の唐津がなまったものとも言われている。また、商家では、その名が財産をするに通じるとのことから、あたり鉢と呼ぶこともある。