燭 台 (しょくだい) 

    萩の民具(23) 市報はぎ(平成4年)1992.4.1号掲載


     結婚式のシーズンである。かつての婚礼は、夕方から夜にかけて行われる習(ならわし)であった。明々と華やかに燈火をともして行われる婚礼はまさに華燭(かしょく)の典であった。
     燭台は蝋燭(ろうそく)を立てる台で、室内に明かりを得るために使用された。柱に吊るされたピンセット様の物は、完全に燃焼しない蝋燭の芯の先を切る芯切である。明治時代の初めに石油ランプが普及する以前は、蝋燭による照明が最も明るかった。
     蝋燭は、日本に仏教伝来とともに伝えられたとされる。当初は蜜蝋製の輸入品で、後に松脂(まつやに)や漆の実を原料に日本でも製造されたが、量は少なく貴重品であった。江戸時代に入り南方から櫨(はぜ)の木が移入植栽され、各地で櫨の実を原料にしたいわゆる和蝋燭(わろうそく)の製造が盛んになる。しかしこれも、各藩で財源にするため統制を受けた。一般市民にとって蝋燭は贅沢品で、儀式や酒宴等の特別の場合を除きあまり使用されなかったようである。