行 灯 (あんどん) 

    萩の民具(25) 市報はぎ(平成4年)1992.6.1号掲載


     行灯は油用灯火具の一種で、油皿に灯した灯火を、紙を貼った木枠で覆ったものである。灯火が風で吹き消されたり、揺れ動くのを防ぐために考案された。
     漢字の行灯の宋音が「あんどん」で、行火(あんか)などと同じく、室町時代に禅家によりひろめられたとされる。携用の火という意味で、江戸時代に入り蝋燭(ろうそく)を灯す提灯(ちょうちん)などが普及するまでは、盛んに持ち歩かれたという。
     一般的には、角形の角行灯と、円筒形の丸行灯とが見られる。写真の丸行灯は枠が二重になっており、内側の枠を回すことで、障子を閉じるように点火した灯火を覆うことができる。この丸行灯は、遠州行灯とも呼ばれている。遠州流茶道の開祖である小堀遠州によって創案されたため、この名があるといわれている。
     有明行灯は室内・寝室用の行灯で、終夜点灯していたためそう呼ばれた。外側に様々な模様を彫り抜いた木枠を被せることで、光を弱めることができた。