水 甕 (みずがめ) 

    萩の民具(28) 市報はぎ(平成4年)1992.9.1号掲載


     萩地方では、大きな甕(かめ)のことをハンドガメとか単にハンドウと呼ぶ。水道が普及する以前には、水を貯えておく大きな水甕が大概(たいがい)の家庭の台所に備えられていた。飲料水用と生活用水用で、甕を二つ置いている家庭もあった。
       これらの甕に、井戸などから水を汲み上げて運ぶのが、主婦の重要な仕事のひとつであった。貯えた水は、柄杓(ひしゃく)ですくって取り分けて大切に使用した。この際、柄杓を逆手(さかて)に持って使用することを戒められて方は多いと思う。
       水甕などは大きくて重いため、また輸送中に割れることもあるため、昔は比較的近くの窯場で焼かれる物を使用した。萩地方では、石見(益田市から大田市)の窯場の甕が多く見られる。石州瓦(せきしゅうがわら)と同じく、赤茶色で光沢がある。鉄道開通以前には、石州のハンドウ船と呼ばれる行商船が、甕や擂鉢(すりばち)等を積んで各地を巡っていたという。早くからの行商と品質の良さで、石見の甕は、焼き物の盛んな九州にまで販路を広げている。