鮨 型 (すしがた)

    萩の民具(29) 市報はぎ(平成4年)1992.10.1号掲載


     秋祭りの季節である。かつて祭礼などのハレの日には、常日頃とは違う特別な食事が用意された。白米だけで炊く御飯や、様ざまな具の入った五目鮨(ごもくずし)は大変な御馳走(ごちそう)であった。
     元来鮨は、魚貝類を塩に漬けたり、飯と共に自然発酵させたりして作るものであった。魚貝類の保存貯蔵のための、手数のかかる食物であった。萩地方ではあまり馴染(なじ)みがないが、全国各地にナレズシなどと呼ばれる鮨が伝えられている。
    五目鮨や握り鮨のように、酢を加えた飯と魚貝類をとり合わせる鮨は、江戸時代の初期に食されるようになったという。現在は米を食べる方法の一種となっている。これらは手数がかからぬためハヤズシとも呼ばれるが、鮨を漬けるという言葉には、鮨を長期間かけて作っていた頃の名残りがある。
    写真の鮨型は、押し鮨を作る際に用いられた。松竹梅や四角に押し固められた鮨は、美しく食べごたえもあり、作り置いていても比較的乾燥を防げた。