輪飾り (わかざり) 

    萩の民具(32) 市報はぎ(平成5年)1993.1.1号掲載


     正月は一年の大きな節目であり、年中行事の中でも特に重視されている。行事の内容は地域により様々だが、全国的には、歳徳様(としとくさま)などと呼ばれる歳神(としがみ)を祀るところが多い。歳神は盆の聖霊様(しょうりょうさま)と同じく、正月に家々を来訪されると考えられている。
     この歳神を祀るのが歳男の役目であり、萩地方においても、供え物の雑煮などを男性が調える家は少なくない。一般的に祭りなどでは、常日頃と異なった空間や時間であることを示すために、注連縄(しめなわ)が張りめぐらされる。正月の輪飾りは、その注連縄を簡略化したもので、家々が歳神の祭場であることを示すものといわれる。
     この輪飾りも、地域により様々な型式が見られる。萩地方では、新藁の左綯(な)いの縄を輪にし、橙・譲葉(ゆずりは)・裏白(うらじろ ※シダ・モロムキ)を添えたものが多い。代々譲る、つまり家が永続し栄えることを願って、これらの品々が添えられるものといわれる。喜ぶに通じる昆布やスルメ・神馬藻(じんばそう)と呼ばれる海藻が添えられた輪飾りも見ることができる。