鳥の巣 (とりのす) 

    萩の民具(33) 市報はぎ(平成5年)1993.2.1号掲載


     萩地方では、背負い篭のことをトリノスとかトノス・トンノスと呼ぶ。篭の形が漏斗状で、鳥の巣に似ているためこの名がある。
     背負い篭は各地で様々な形の物が用いられている。背中当てと背負い縄を竹篭に取り付けた物が一般的だが、相島や大島では、黒松の枝を利用した鳥の巣が見られる。写真の鳥の巣も、骨組みは黒松の一材で作られている。枝の一ヶ所から、六〜七本の適当な太さの小枝が出た所で芯枝を切り、篭の骨組みとする。これにシュロ縄や藁の小縄を巻き、背中当てと背負い縄とを取り付けるのだが、総てが自作される。
     松枝の利用は、島に竹篭の材料の真竹を産しないからと説明される。しかし、似たような背負い篭を、中国山地の山中でも朝鮮半島でも見ることができる。背中当ても、楕円形や長方形に編まれた物が有り、分布に地域的特徴が見られるようである。鳥の巣と他地方の背負い篭とを調査比較することで、萩地方の文化がより明らかになると思われる。