角 樽 (つのだる) 

    萩の民具(35) 市報はぎ(平成5年)1993.4.1号掲載


     萩地方では、婚礼や棟上げ等の祝い事の際に、角樽に酒を入れて贈答していた。一般的に角樽は、二本の高い柄の付いた漆塗りの樽のことをいう。しかし同じように朱漆を塗り、太い竹のタガで締めてある樽も角樽といっていた。角樽は酒屋に頼み事前に送ってもらう大型の物もあるが、普通は提げて歩ける程度の大きさであった。
     婚礼や結納に先立ち、萩地方では、キメザケ(決め酒)とかキメと呼ばれる儀礼が行われる。かつては結納を行わずに、このキメザケをもって婚約成立とみなしていたともいう。婿方に依頼されたナカホド(仲人)や世話人が、酒肴を嫁方に持参し正式に結婚の申し込みをするのだが、その際にも角樽が用いられていた。中に入れる酒は、一緒になるのだから一升だとか、一生添うように願って一升などとされる。
     角樽は必要の際に酒屋が貸し出していた。ガラス瓶が普及して瓶詰めの酒を購入するようになってから、角樽の贈答は少なくなったという。