幟 (のぼり) 

    萩の民具(36) 市報はぎ(平成5年)1993.5.1号掲載


     萩地方では、長男が初節供を迎える際に、嫁の里から幟や吹流しが贈られることが多い。贈られた家では、かねて用意しておいた支柱にこれらを高く掲げることになっている。武者絵が描かれた幟には、一般的に長男誕生の家の家紋と嫁の里の家紋が染め抜かれる。婿嫁双方の家で男子の誕生を祝い、武者のように健やかに成長することを願うのだという。
     この端午の節供に掲げる と支柱は、民俗学的には神霊の招代とか依代とされている。かつて人々は、高い幟を目印に招き依らせる神霊に、生児の加護を祈願したのではないかと考えられている。
     萩地方でも、最近は鯉幟の贈答が多くなったようだが、かつては幟やフラホと呼ばれる大漁旗状の旗の贈答が盛んであった。これらを掲げることの方が、より古式であったともいわれる。また支柱の先には、杉の葉・笹・竹の籠・金属の飾り等の良く目立つ物が取り付けられ、マネキと呼ばれる小さい幡(はた)が取り付けられる。幟を掲げることは、やはり何か深い意味が有るようである。