艪 (ろ) 

    萩の民具(39) 市報はぎ(平成5年)1993.7.1号掲載


     小型船の推進具である艪は、最近は船外機の普及でほとんど用いられなくなった。かつては「棹は三月、艪は三日」といわれ、比較的容易に使用できる推進具とされていた。
     萩地方の艪は、艪腕の形状に注目すると、二種類に分けることができる。一つは、腕の形が角材の角を落としたような細長い艪で、カクウデとかナガウデと呼ばれる。もう一つは、腕の形が平たく楽器の琵琶に似ている艪で、ビワロとかヒラウデと呼ばれる。萩地方では、前者が一般的に用いられている。
     全国的に見ると、平腕の艪は、瀬戸内海方面を中心に広い範囲で使用されている。これに対して腕が細長い艪は、萩地方をはじめ、山陰西部地域で特徴的に使用されている。またこの地域では、全国一般と異なり、艫の艪を右舷側で押すという所が圧倒的に多い。これらの事実は、全国的にも注目を集めている。
     艪等の民具に限らず、萩地方の民俗の特徴を明らかにするために、他地域の民俗との比較調査研究を行う必要性を痛切に感じている。