盃 (さかずき) 

    萩の民具(45) 市報はぎ(平成6年)1994.1.1号掲載


     酒を飲む容器を盃と呼ぶ。盃には大盃から小盃まで、また木製から陶磁器製や金銀製まで各種各様の物がある。現在は、陶磁器製の猪口(チョコ、チョク)が一般的に用いられている。
     この猪口が使用されるようになるのは江戸時代のことで、それも初期には都市においてのみだったとされる。清酒が造られるようになり、また 酒が飲まれるようになったことと、猪口の普及は深い関係があるともいわれている。
     かつての農山漁村においては、飲酒の機会は比較的少なく、神事や祝事等の特別の場合に限られていた。集まった一同が、同じ瓶で醸された酒を同じ大盃で飲み合い、そして一同で酔って共同一体感を持つことを飲酒の目的とした。現在もその際の名残が、宴会での盃のやり取りという形で残っている。
     萩地方の農山漁村で飲酒の機会が増えるのは、兵役に就いた者が都市での宴会を経験して帰村するようになる明治時代のことといわれている。