火鏝 (ひごて) ・火熨斗 (ひのし) ・炭火アイロン (すみびあいろん) 

    萩の民具(46) 市報はぎ(平成6年)1994.2.1号掲載


     火鏝や火熨斗は、布類に押し当てて、しわを伸ばしたり形を整えたりする際に使用される。いずれも江戸時代に盛んに使用されるようになったといわれる。
     火鏝の多くは金属製で、炭火を埋めた灰の中に差し込んで熱して使用する。舟型の 先は、細部のしわ伸ばしや整形に適している。
     火熨斗は柄杓の形をしており、金属製の桶の部分に炭火を入れて使用する。この火桶の底が平滑で広いことや、火桶がある程度重いこと、また温度が長時間安定していること等は、厚い布類や広い範囲のしわ伸ばしや整形に適している。
     明治時代の中頃に、舟型で内部に炭火を入れる炭火アイロンが使用されるようになる。高い温度と圧力で布類の細部まで作用できるのが特徴で、一見すると、古来使用の火 と火熨斗の長所を受け継いで開発されたようにも考えられる。しかし実際は、幕末期から輸入されるようになった西洋のアイロンが発達したものとされている。