高足膳 (たかあしぜん) 

    萩の民具(50) 市報はぎ(平成6年)1994.6.1号掲載


     機械による田植えが普及する以前は、農家が互いに互いの家の田植えを手伝いあっていた。田植えに限らず、労働力を交換して共同で作業することを、萩地方ではテマガエ(手間換え)とかユイ(結い)と呼ぶ。
     苗代で二十センチ位に育てた苗を、数本づつに別けて一々手で水田に移植するというかつての田植えは、大変に手間のかかる重労働でもあった。そのため、広い水田を所有する家などでは、労働力の交換だけでは間に合わず、田植えを手伝うサオトメ(早乙女)とかソゥトメと呼ばれる女性を雇うこともあった。
     家によっては、季節になると、何人もの早乙女が泊まり込んで田植えの手伝いをしていたという。その早乙女たちの朝夕の食事の際や、田植え終了時の慰労のための飲食の際などに、この高足膳は使用された。かつては、客人の多くある家では、格式張らない簡単な食事を出す時のために、まとまった数の高足膳を調えていたという。