フチダカ (ふちだか) 

    萩の民具(51) 市報はぎ(平成6年)1994.7.1号掲載


     かつて三見浦では、旧暦7月7日の七夕の日に、東西のハト(波止、防波堤)に棚を設け、そこに笹竹に飾り付けを施した七夕飾りを立てて豪華さを競っていた。
     昔からこの日は、7回食べて7回泳ぐものとされ、子供達はそれぞれが小豆ご飯の弁当をハトに持参し、東西で七夕飾りを奪い合ったり、泳いだりして終日過ごしていた。また各々の家でも、弁当を持ってハトに出て、一晩中飲食しながら歓談していたという。
     これらの弁当の容器として、三見浦ではフチダカが用いられていた。フチダカは蓋の有る食物の容器で、薄く漆が塗られており、重ねて箱に納めることで多数持ち運ぶことができるようになっている。萩地方では、祭りなどの行事の際に料理を入れて運んだり、田植えや稲刈り等の農作業を行う人に昼の食事を運んだり、また赤飯や菓子を贈答したりする際にも、フチダカは盛んに用いられていた。
     行事が旧暦で行われていた頃の七夕は、盆の一週間前にあたる。三見浦での一連の行事は、身体を浄めて精霊様を迎える準備をし、七夕飾りを目印に来臨した精霊様と交歓しているようにも解釈できる。