切 溜 (きりだめ) 

    萩の民具(54) 市報はぎ(平成6年)1994.10.1号掲載


     切溜は、薄く漆を塗った木製の箱で、食物や料理の材料や穀物を入れる容器として使用されていた。切溜には大小深浅があり、目的によって使い分けられるが、普段は大きい物から順に重ねて収納されていた。
     かつて見島では、初子が誕生した時に、名前を付ける名付けの日までに、嫁の実家から婚家に、切溜に米三升と産着を入れて贈ることになっていた。嫁の兄弟姉妹や親類も、やはり切溜に米を入れて祝いとして贈っていた。婚家ではその返礼に、それらの人々を名付けの祝宴に招き、そして、持参された切溜には特大のボタモチを入れて返していた。
     また三見でも、名付けの祝宴を催すにあたり、切溜に入れたイイシンと呼ばれる餅や 頭等の祝いの品々が、親類縁者から贈られていた。切溜は、特別の日に特別の品物を贈答する際の容器としても使用されたようである。
     用途が広く、しかも入れ子造りで収納にも便利な切溜は、なかなか重宝な容器であった。