チロリ (ちろり) 

    萩の民具(55) 市報はぎ(平成6年)1994.11.1号掲載


     酒を暖める際に用いる金属製の容器をチロリと呼ぶ。一般的には円筒形で、一方に注ぎ口があり、弦を付けて提げられるようになっている。大きさも、一合入りから一升入りの物まである。
     火で直接暖めるようになったチロリもあるが、そうすると酒の味がまずくなるということで、湯に浸して暖めるようになった物が多い。写真のチロリは、銅壷と呼ばれる金属製の湯沸かし器とセットになっている。
     チロリの語源は不明で、地炉(地上や床に設けた炉、イロリ)で暖めるからとか、注ぐ際にチョロチョロと出るからなどと説明される。中国にも形や用途が類似した容器があり、日本には中国から伝わったとされている。
     チロリは、江戸時代に、主として町方で使用されるようになる。清酒を暖めて飲むという習慣は、その時期に、都市部で定着したいわれている。
     酒の飲酒が庶民にとって一般的なことになるのは、更に時代が下がって明治以降のことである。