杵 (きね) 

    萩の民具(56) 市報はぎ(平成6年)1994.12.1号掲載


     杵は、穀物の脱穀、精白、製粉や餅搗きの際に、臼と対で使用される。形の上では、竪杵と横杵とに大きく分けられる。
     竪杵は、丸太の中程を手で握られる位の太さに削ったもので、その部分を持って上下に動かして、臼の中の物を搗く。月で餅を搗いているとされる兎が持っているのがこれだが、かつては竪杵の方が一般的に用いられていた。萩地方では、味噌豆を搗きつぶす際に用いられる程度で、現在はほとんど使用されない。
     横杵は、杵にほぼ直角に横木(柄)を取り付けたもので、江戸時代に使用が始まったとされる。竪杵に比べて力を加えやすいため、広く用いられるようになった。その形は、足で横木を踏む台唐(萩の民具、10)の杵の影響を受けたと考えられている。
     杵の先端は、餅を搗く物は平で、精白などを行う物は凹形になっている。餅搗き杵には、ある程度木質が堅くて重量があり、杵の表面に餅がつきにくい椿の木が適しているといわれる。