湯タンポ (ゆたんぽ) 

    萩の民具(58) 市報はぎ(平成7年)1995.2.1号掲載


     最近の住生活の変化に伴い、ほとんど使用されなくなった民具に湯タンポがある。かつては、中に湯を入れた金属製や陶製の湯タンポを寝床の中に入れて、寒い冬の夜には体を温めていた。
     語源や湯タンポ使用の歴史等については、不明の点が多い。タンポは器を叩いた時の音から来た名称とする説や、中国の同類の民具がかつて湯婆と呼ばれていたという説などがある。この湯婆は、炬燵(こたつ)や行火(あんか)や行燈(あんどん)などと同じく、中国大陸より禅僧によって伝えられ、広められたとも言われている。
     軽量で破損することが無いブリキ製の湯タンポが普及する以前には、全国各地の窯場で陶製の湯タンポが作られていた。郷土博物館にも、地元で製作されたと考えられる湯タンポが収蔵されている。残念ながら、製作や入手の年代、製作場所、使用者や使用年代等々が、収集時に既に不明だったようである。民具だけでなく、萩地方の他の伝統的生活文化の多くが、今、不明になりつつある。