木挽鋸 (こびきのこ) 

    萩の民具(60) 市報はぎ(平成7年)1995.4.1号掲載


     かつてチェーンソウ(動力鋸)や電動帯鋸などが導入される以前は、木材の伐採や製材を、杣(そま)、木挽と呼ばれる職人に頼っていた。各々の作業は、技術と体力を要し、また時間も要していた。
     木挽鋸は、主に製材を行う木挽職人が使用していた。木挽職人は、伐採現場で木材をリンと呼ばれる台に立て掛けて挽け分けたり、倒したままで挽き分けたりしていた。また、製材せずに山から搬出した木材を、建築現場や造船所で板や柱に製材することもあった。かつては、板や柱を入手するということは、現在考えるよりも大変なことであった。
     萩地方で見られる木挽鋸は、高知県土佐山田町や滋賀県甲賀郡で作られた物が多い。いずれの地域も、明治時代の北海道開拓に伴う大需要で、全国的な鋸産地となったのだが、以前からの木材伐採や製材技術の先進地でもあった。萩地方にも、その技術が、道具と共に入ってきているようである。