蒸 籠 (せいろう) 

    萩の民具(61) 市報はぎ(平成7年)1995.5.1号掲載


     蒸籠のことを、萩地方ではセイロとかセーロと呼ぶ。蒸籠には角型と丸型とがある。一般的に用いられていた角型は、井桁に組んだ板枠の底に桟を打ち、その上に簀子を敷いた形になっている。丸型は、枠が曲物となっている。いずれも数段重ねることができ、湯の煮えたぎった鍋釜の上にのせて、蒸気によって食物を蒸すようになっている。
     萩地方では、五月端午の節句に柏餅を作ることが多い。柏餅といっても、実際は、餡を入れた米粉や小麦粉で作った団子を、イギノハと呼ぶサルトリイバラの葉で包んで蒸した物である。かつては、イギノハダンゴとも呼ばれるこの団子を蒸す際に、蒸籠が一般的に用いられていた。現在は、金属製の蒸し器が用いられることが多い。
     団子以外にも、餅搗きの折りに糯米を蒸す際や、赤飯などの強飯、粽、笹巻、饅頭、茶等を蒸す際にも、各家庭で蒸籠が盛んに用いられていた。蒸すという調理の方法は、現在よりももっと身近であったようである。