弁当行李 (べんとうごうり) 

    萩の民具(62) 市報はぎ(平成7年)1995.6.1号掲載


     ジューンブライド、6月の花嫁という言葉を最近良く耳にするようになった。しかし、かつての萩地方の農村部では、六月は田植えで忙しい時期であり、とても婚礼などが行える状況にはなかった。
     現在でも萩地方では、婚礼が終わった後に、姑が嫁を連れて、隣近所に挨拶して回るということが行われている。昔はその際に、姑が、この度手間を増やしましたから宜しくお願いしますといった言葉を述べることになっていたという。このことは、嫁や嫁入り前の娘が、大変重要な労働力であったことを物語っている。
     農作業、家事、子育て等に追われる農村部の嫁だが、1年に数回は里帰りなどをして息を抜くことができたという。田植えが終了した際に行われるウエミテと呼ばれる慰労会も、数少ない楽しみの一つだったとされる。かつては、互いに労働力を交換し合った者たちが、弁当持参で集まって、終日飲食し談笑して過ごしたり、時には温泉に行ったりしていたという。