付 木 (つけぎ) 

    萩の民具(66) 市報はぎ(平成7年)1995.10.1号掲載


     付木は、杉や桧の薄片の端に、着火しやすい硫黄を塗り付けたもので、火を他の物に移す際に用いられた。明治時代の初めに、マッチが国産化され普及するに従い、次第に使用されなくなった。
     萩地方では、祝いの赤飯や土産などのお裾分けをいただいた際に、それらの入っていた容器に、ささやかなお返しの品を入れて返す習わしになっている。その品をイレゾメ(入れ初め)とかオウツリ(御移り)と呼ぶ。葉書や半紙やマッチなどを入れることが多かったという。いただいた幸いの、そのまた一部をお返しすることで、幸いが循環することを願った民俗と考えられる。
     付木には硫黄が用いられているが、これをイオウギと呼ぶ所がある。語呂が祝い木に通じるということで、祝いの贈答品に用いられていたことがあるという。このことと、幸いのお返しであるイレゾメに、付木に取って代わったマッチを用いることとは、無関係ではないようである。