石州瓦 (せきしゅうがわら) 

    萩の民具(68) 市報はぎ(平成7年)1995.12.1号掲載


     赤瓦とも呼ばれる石州瓦は、島根県の大田市から益田市にかけて生産されている。赤い釉薬がかかった光沢のある瓦で、丈夫で耐寒性に優れているとされる。山口県下でも、彼地で生産されるハンドガメ(水甕)やカガチ(擂鉢)などとともに、古くから利用されていた。
     瓦や甕といった重量のある物は、輸送に困難が伴うため、一般的には近くで生産された物を求めていた。しかし、石見の瓦や甕の場合は、品質の良さもあって、かなり遠方にまで出回っていた。萩地方にも、昭和初年頃までは、石見のハンド船と呼ばれる行商船が盛んに寄港し、内陸部まで販路を開いていたという。
     産地より遠く西や南に製品が出回っているのは、北寄りの風が吹くことが多い冬季に、行商船が盛んに活動していたことを示している。彼地では積雪や凍結によって仕事ができないことも多く、職人たちが、暖かい地方の窯場に出稼ぎに行くこともあったという。そのことも、製品の流通分布と無縁ではないようである。