御 膳 (ごぜん) 

    萩の民具(69) 市報はぎ(平成8年)1996.1.1号掲載


     萩地方の漁村では、正月2日から5日頃までに、乗り初めという行事が行われる。乗り初めは仕事始めの儀礼で、一年の最初にあたり、船に御膳を持参し、それを船霊様(船に祀る神霊)に供え、また供物を龍神様(海の神)に捧げ、一年の無事と豊漁を祈願する。
     御膳には、専用の四角い小さな盆が用いられることが多い。一般的な御膳の内容は、御神酒とご飯と刺身で、黒豆や雑煮や煮しめなどの正月料理を加えることもある。御膳を持って船に乗る時の乗り方、供物を置く場所、供物を捧げる舷など、昔からの言い伝えが現在も守られている。 かつてはどこの地区でも、乗り初めの後に、船主が乗組員を呼び、盛大に飲食していたという。見島では、乗り初めの際に、各々の漁船からたくさんの蜜柑が撒かれ、それを多くの人が拾いに出るのが習わしとなっている。いずれも船主の負担で行われる。これらは、翌年も同じように散財ができるように、予め豊漁を祝う行事と考えることもできる。