火吹竹 (ひふきだけ) 

    萩の民具(70) 市報はぎ(平成8年)1996.2.1号掲載


     火吹竹は、火を吹き起こす際に用いられる。長さは50〜60センチメートル、一端に節を残した竹筒で、その節には小さい穴が穿ってある。節の反対側の端を口に当てて息を吹き込むと、節に開けられた穴から、勢い良く空気が吹き出るようになっている。
     火吹竹は、かつてはどこの家でも、竃の傍らや台所に立て掛けて置いてあった。しかし、近年、竃や七厘で煮炊きをする機会が少なくなり、ほとんど見ることができなくなった。
     萩地方では、2月3日の節分の日に、厄年の人の厄落としが行われる。伝承された厄落しの方法に、火吹竹に歳の数だけ豆を入れて、道の四辻や集落の境に立てるということがある。これは、他界へ出向いて仮に死んだ後に、この世に再生して厄年を免れるということを、象徴的に行う儀礼と考えることができる。
     人の生命の源泉である食物を調理する竃の火に、言わば生命を吹き込むということで、火吹竹は呪具としても用いられたようである。