杓 子 (しゃくし) 

    萩の民具(72) 市報はぎ(平成8年)1996.4.1号掲載


     飯や汁をすくい取る道具を杓子と呼ぶ。萩地方では、飯杓子と汁杓子の両方を、杓子と呼んだりシャモジと呼んだりしていた。最近は、前者をシャモジ、後者をオタマとかオタマジャクシと呼んで区別するようになっている。
     飯杓子や汁杓子を区別せずに呼んでいたのは、元来、杓子には両方の用途があったからとされる。つまり、中がくぼんだ杓子が古い形で、それで飯も汁もすくい取っていた。ポロポロとした強飯や雑穀飯や粥状の飯をすくうには、くぼんだ杓子の方が便利であった。現在我々が食しているような柔らかくて粘り気があるご飯を炊くようになり、平らな板状の杓子が使用されるようになったとされる。
     かつては、ご飯やおかずといった食物を調え、それを取り分けるのが、一家の主婦の大切な役目であった。そのためか、全国的に杓子は主婦権の象徴とされた。姑が嫁に家計の切盛の権限を譲ることを、「杓子を渡す」と言う所は多い。