鯉 幟 (こいのぼり) 

    萩の民具(73) 市報はぎ(平成8年)1996.5.1号掲載


     中国の黄河上流に竜門という急流があり、これを登ることができた鯉は竜と化すという言い伝えがある。古くより、鯉は滝をも登る魚、困難を克服して立身出世する魚と考えられていた。
     また鯉は、爼の上にのせても、眼をふさいでおくと跳びはねないということで、物おじしない魚とか潔い魚とも考えられていた。
     男児の出生を祝い、その無事な成長を願う端午の節供に、鯉幟を揚げるのは、鯉の好ましい性質にあやかるためとされる。
     現在見られる吹き流し状の鯉幟は、武者絵などを描いた幟の上端に取り付ける、マネキと呼ばれる小さい幡から発達したとされる。全国的には、江戸時代の中頃から揚げられるようになったが、萩地方では、明治時代以降に流行したようである。
     幟やマネキから発達した鯉幟は、民俗学的には神霊の招代とか依代と考えられている。かつて人々は、招き寄せた神霊によって、子供たちが加護されると考えたようである。