団 扇 (うちわ) 

    萩の民具(76) 市報はぎ(平成8年)1996.8.1号掲載


     萩地方の一般の家庭において、扇風機が普及し始めるのは昭和30年代のこととされる。それ以前には、団扇や扇子が、暑さを凌ぎ涼しさを味わうために用いられた。
     かつて暑い時季の外出には、日よけの傘や帽子、扇子などを持参するよう心がけていた。そして、汗が出ることを念頭に服や着物を着用した。また、この時季の訪問客に対しては、まず団扇立てに立てた団扇をすすめていた。客人は自ら扇いで涼をとることになるのだが、これも大切な夏のもてなしの一つであった。
     細かく割った竹を骨とし、それに紙を貼った団扇は、消耗品でもあった。太めの竹骨に紙を貼り、柿渋を塗った丈夫な渋団扇もあったが、七厘やコンロの火を毎日扇ぐことで、多くは損なわれた。かつて商店などでは、商品名や商店名を記した団扇を、中元時季には得意先に盛んに配っていた。暮れに配られていたマッチと共に、宣伝用の団扇は、最近ほとんど見られなくなった。