伸 子 (しんし) 

    萩の民具(77) 市報はぎ(平成8年)1996.9.1号掲載


     現在でもそうだが、袷の着物などを洗う際には、一旦その着物をほどき、縫い合わせて元の反物の状態にする。その後に洗って汚れを落とし、糊付け仕上げ等を行い、再び着物に縫いあげる。
     着物や反物を洗濯し、布を再生させることを洗い張りという。その洗い張りの際に用いられるのが、竹ヒゴの両端に短い針を取り付けた伸子である。布の幅よりも長い伸子で、布の両縁を刺し留めることで、弓形にたわんだ伸子により、布の皺が伸ばされる。洗った布を板に貼り付けて乾燥させる方法とともに、伸子による張り伸ばしは、かつては一般的に行われていた。
     昭和20年代には、萩市内でも、洗い張りを生業とする家が7〜8軒あったという。着物を着る人が少なくなるとともに、洗い張りの機会は少なくなってきた。洗い張りにより、着物の布地を再生するだけでなく、それを着る人自身の心身があらたまるというような意識は、次第に薄れつつあるようである。