ト ビ (とび) 

    萩の民具(81) 市報はぎ(平成9年)1997.1.1号掲載


    トビ 萩地方では、正月の間、床の間を始め各所に、オイワイ(ミカガミモチ、鏡餅)を供え、注連飾りを飾る。家や地域によっては、オイワイの上に、半紙を丸めたり折り畳んだりして烏帽子のような形にしたものを立てる。また注連飾りに、折り畳んだ半紙に寿の字や丸三つを書いたものを添える。かつては、年越しをさせる諸道具に、米を包んで捻った半紙を結ぶこともあった。これらの紙のことを、トビとかオトビなどと呼ぶ。
     トビの語源については良く分かっていない。ただ全国的には、贈り物やそれに対するささやかな返礼(萩地方で言うイレゾメ)、正月に頂く年玉(金銭や餅や米や魚等)、門松や年越しさせる道具に結んだり、その年初めて水を汲む際に水神様に供えたりする米を包んだオヒネリ、等々をそう呼んでいる。
     どうもトビとは、親しい交際を望むものに対しての贈り物、もしくはそれを示す印のように受け取ることができる。萩地方でも、正月に家々を訪れる神霊や常日ごろ使用する道具などに、トビと呼ばれるものを示し贈ることで、親しい交際と、それによってもたらされる幸いを願ったのではなかろうか。