草 鞋 (わらじ) 

    萩の民具(87) 市報はぎ(平成9年)1997.10.15号掲載


     草鞋は鼻緒式の履物の一種で、一般的には稲藁で作られる。足をのせる台の縁には、チ(乳)と呼ばれる輪が設けられており、これに長い緒を通して台を足裏に密着させる。このため草鞋は、長時間の労働や遠方への歩行に重宝されたが、現在はほとんど用いられていない。
     萩地方では、足の病の治癒を祈願する神社に、大量の草鞋が奉納されているのを見ることができる。足とかかわりのある物だから奉納するのだと説明されるが、足の病を草鞋に移して神社に置いて帰るとも解釈できる。
     萩地方の草鞋の場合、乳が左右二つずつとなっている。全国的には、これが一つずつのものや、無いものも見られる。また、江戸時代の軍学者は、武者草鞋と呼ばれる乳が左右三つずつある草鞋を履いていたとされる。東北地方を巡り、山口県の海辺を歩いた吉田松陰が、その折々にどのような草鞋を履いていたのか興味が持たれる。