俵 (たわら) 

    萩の民具(88) 市報はぎ(平成9年)1997.12.15号掲載


     かつて俵は、叺などと共に藁製の容器として広く一般的に用いられていた。米を初めとした穀物や芋類の容器としてだけでなく、木炭や石灰の容器としても用いられた。その名残からか、現在でも袋に入ったそれらを、一俵、二俵と数えている。
     米などを収める袋が市販され普及するまでは、俵は各々の農家で自作されていた。コマシと呼ばれる俵を編む台が用いられるのだが、一俵を編み上げるのに約一時間を要したという。藁の小束を編む藁縄をなう必要もあり、その作業を含めると、一日に数俵編むのが精一杯だったとされる。
     萩地方では、かつて、住吉祭りの引き受け町内となった折りや、新築した家を披露する折りなどに、親戚や知人から俵に納めた米が贈られていた。これは、客を招いての宴会に、実際に米が大量に必要だったからと説明される。全国的には、正月に家々を巡られる神を招く場を設ける際に、特に米俵を用意する所もあり、俵の容器以外の用途も注目される。