萩市景観重要建造物
▼内容
景観重要建造物とは、景観法に基づいて市長(景観行政団体の長)が指定するもので、地域の特徴的で良好な景観を呈している建築物や工作物を指定し、文化財と同じように現状変更の規制を行い、外観の保全を図るものです。また、行政と所有者との協力により、良好な景観を守っていこうとするものです。なお、文化財保護法に規定する国の重要文化財等を指定することはできませんが、県・市指定文化財を景観重要建造物に指定することはできます。
▼景観重要建造物の定義
景観法第19条では、景観行政団体の長は、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な建造物(これと一体となった土地その他の物件を含む。)を景観重要建造物として指定することができると規定しています。
(1)指定要件
- 景観計画の景観重要建造物の指定方針に即すること。
- 地域の自然、歴史、文化からみて外観が景観上の特徴を有し、良好な景観の形成に重要なもの。
- 道路その他の公共の場所から公衆に容易に望見されること。
【萩市景観計画における指定方針】
藩政期や幕末、近代を含め、歴史的変遷や文化を表し、主要な景観要素となる建築物や工作物
(2)現状変更規制等
- 景観重要建造物の増築、改築、移転若しくは除却、外観変更の修繕・模様替え・色彩の変更は、市長の許可がなければすることはできない。なお、通常の管理行為、軽易な行為、非常災害のための応急措置は現状変更の規制が適用除外となる。
- 景観行政団体の長は、景観重要建造物の良好な景観の保全に支障があると認めるときは、現状変更を許可してはならない。
- 景観行政団体の長は、現状変更規制の違反者や、許可に付した条件に違反した者がある場合には、違反者に原状回復その他必要な措置を命ずることができる。
▼指定した景観重要建造物の概要及び景観的特性
(1)金谷神社の社殿及び工作物等 |
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指定年月日:平成20年10月3日 |
所在地:萩市大字椿2794番地 |
敷地:萩市大字椿2794番地 約5,900平方メートル 【概要】 かつては金谷天満宮と呼ばれ、文治2年(1186)に長門守護職佐々木高綱が大宰府天満宮を奥金谷に勧進したと伝わる。享保5年(1720)に現在地に遷座し、社殿、回廊、庫裏、鳥居、仁王門、鐘楼、心字池などが順次完成した。明治6年(1883)に金谷神社と改称し、現在に至る。 【景観的特性】 建物群が、鳥居や灯篭、玉垣等の工作物及び心字池や松の巨木が並ぶ庭園と一体となって、神社としての文化的景観を呈し、良好な歴史的景観の形成に大きく寄与している。 |
(2)ミヨシノ醤油有限会社の醤油蔵 |
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指定年月日:平成20年10月3日 |
所在地:萩市大字吉田町70番地 |
敷地:萩市大字吉田町70番地 363.63平方メートル 【概要】 吉田町本通り(県道萩城址線)に面して建つ醤油を製造する蔵である。入口は、本通り横の路地に南面する。当店の創業は大正5年で、創業時より現在地に店舗・製造蔵を構えている。蔵は昭和初期建築の2階建てであり、面積は367.52平方メートルである。切妻屋根の棟が3つ連なって一軒の大型醤油蔵を構成しており、吉田町本通りに対して3つの妻面を見せている。 【景観的特性】 切妻銀黒色瓦の3つの屋根と、白色吹付けの小壁及び焼杉縦張りの腰壁が、特徴ある蔵の景観を示しており、市内の商業地域で良好な歴史的景観を形成している。 |
(3)渡邉蒿蔵(わたなべ こうぞう)旧宅 |
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指定年月日:平成20年10月3日 |
所在地:萩市大字江向5番地ほか |
敷地:萩市大字江向5番地、5番地-2、6番地、6番地-1 計1,686.2平方メートル 【概要】 江向八丁筋の南側、橋本町との境界近くに所在する。渡辺は、幕末の志士として松下村塾に学び、明治維新後には官営長崎造船局初代局長となり、また工部省の要職を歴任したが、退官の後、萩に戻り、この建物に居住した。渡辺は昭和14年に亡くなり、その後は親族が住んでいたが、平成10年に空家となった。平成16年に、千葉県在住の子孫から萩市が寄贈を受けたものである。 【景観的特性】 明治中期の建築当時の姿がそのまま残り、大型の屋敷形式の建物として貴重な歴史的景観を形成している。 |
(4)潮音山観音院観音堂(ちょうおんざんかんのんいんかんのんどう) |
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指定年月日:平成21年3月4日 |
所在地:萩市大字山田5148番地 |
敷地:244.80平方メートル
【概要】 寺の創建年は不明であるが、永禄4年(1561)に臨済宗寺院として再興された。現在の観音堂は、二度の類焼の後、嘉永6年(1853)に再建されたもので、藩政期には海の守護堂として信仰を集め、また玉江浦の灯台としての役割も担った。木造宝形造屋根本瓦葺き(庇部分は桟瓦葺き)で、建床面積は69.13平方メートルであり、内部に観世音菩薩が祀られている。周囲は土塀で囲まれており、その内側、お堂前面に2基の灯籠がある。 【景観的特性】 江戸時代には萩八景の一つとしてされており、二重屋根の堂宇をはじめ、周囲の土塀、灯籠が、背後の丘陵の緑や前面の玉江浦の海と調和し、良好な歴史的景観を形成している。 |
(5)森井家住宅(もりいけじゅうたく) |
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指定年月日:平成21年3月4日 |
所在地:萩市大字西田町22番地 |
敷地:288.42平方メートル
【概要】 西田町の旧御成り道に南面して建つ大型の町家であり、建築年代は18世紀後半~幕末と推定される。江戸期には酒屋が営まれ、明治~大正期には商工会議所として、戦後~昭和40年頃には卓球場等として利用された。 【景観的特性】 江戸時代の有力町人が建てた切妻造り平入り屋根の大型町家がかつての御成り道沿いに残り、広い屋根面と2階の漆喰壁が重厚な趣きを漂わせ、商業地で良好な歴史的景観を形成している。 |
(6)芳和荘(ほうわそう) |
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指定年月日:平成21年3月4日 |
所在地:萩市大字土原611番地 |
敷地:1,130.25平方メートル 【外観】 新堀川河口付近に大正初期に建築された遊郭建築物で、現在は旅館として使用されている。木造2階建て寄棟造で、ほぼ総二階の大規模な建物である。中央に中庭を配置する「ロ」の字型の構成となり、中庭に沿って回廊が巡らされる。遊郭建築物は現存するものが少なく、この建物には希少価値がある。 【景観的特性】 大正初期に遊郭として建てられた、回廊を有するほぼ総二階の寄棟造大型木造建築物が、周囲の塀とともに、貴重な歴史的景観を形成している。 |