![]() 瓦や甕といった重量のある物は、輸送に困難が伴うため、一般的には近くで生産された物を求めていた。しかし、石見の瓦や甕の場合は、品質の良さもあって、かなり遠方にまで出回っていた。萩地方にも、昭和初年頃までは、石見のハンド船と呼ばれる行商船が盛んに寄港し、内陸部まで販路を開いていたという。 産地より遠く西や南に製品が出回っているのは、北寄りの風が吹くことが多い冬季に、行商船が盛んに活動していたことを示している。彼地では積雪や凍結によって仕事ができないことも多く、職人たちが、暖かい地方の窯場に出稼ぎに行くこともあったという。そのことも、製品の流通分布と無縁ではないようである。 |