玉木正韜先生之碑

（椎原　杉家墓所）
　　

　団子岩と呼ばれる松陰誕生地に隣接して西北側山裾に吉田家・杉家・玉木家等一族の墓所があり、その右隅に玉木家一族の墓がある。そこに入る石段を登ると、正面に高さ一五五センチメートル、幅六〇センチメートルの碑が建っている。表面上部に毛利元昭篆額になる「玉木正韜先生之碑」とあり、下に玉木文之進の功績が書かれている。大正十四年（一九二五）十一月六日に、教えを受けた門人達二十名が五十年忌にあたり建てたのである。
　玉木文之進は、文化七年（一八一〇）萩藩士杉七兵衛の三男として生まれ、十一歳の時同藩士玉木十右衛門の養子となった。吉田松陰の実父杉百合之助、松陰の養父吉田大助は実兄になる。天保十三年（一八四二）松下村塾を創設し、松陰をはじめ有能な人材を厳しく鍛えた。その後、藩校明倫館の都講として出仕、また異船防御掛等を勤め、また諸郡の代官を歴任して民政に力を尽くした。明治二年（一八六九）隠退して松下村塾を再開し教育に専念していたが、明治九年（一八七六）の萩の乱に関係し責任を負って、ここ玉木家の墓前にて切腹した。六十七歳であった。