|
![]() |
| 図1 |
![]() |
| 図2 |
![]() |
| 図3 軟体動物 |
![]() |
| 図4 節足動物 棘皮(きょくひ)動物 |
![]() |
| 図5 魚類 |
「海からの宅配便」の更新を長く休んでいましたが、私の仕事も少しは落ち着いてきましたので、再開したいと思います。
さて、再開後1回目のこのたびは、萩近海の珍生物に関する共同研究についての話題です。数年前から、萩をふくむ山口県日本海側ではカラフルな熱帯魚がとれたり、ダイバーが深海魚にバッタリ出会ったりしたりと、いろいろな珍しい生物が出現したことを当HPや新聞や展示などで紹介してきました。
それにしても、全体でどんな種類の生物がどれぐらい見つかったのでしょうか?また、それらがよく現れているのはどうしてなのでしょうか?こうした謎に可能な限り迫ろうと、昨年、長門市にある山口県水産研究センターの小林さん・河野さん、下関市の海響館の土井さん、そして萩博物館の堀が組んで、お互いがそれぞれ集めてきた1984〜2004年までのデータを持ち寄り、いろいろ論議しました。その結果が、この3月、「山口県の日本海沿岸域における海洋生物に関する特記的現象」(山口県水産研究センター研究報告第4号)として発表されました。
この研究報告は研究機関用なので販売・配布していませんが、1部ほど当館エントランス「萩博いきもの研究室」の図書コーナーに置いておきますので、興味のある方はご覧ください(図1, 2)。
要点だけざっと知りたいという方のために、ここで研究報告の内容もふまえたダイジェストをQ&Aで紹介することとしましょう。
| Q1. どれぐらいの数の珍しい生物が見つかったの? |
| A1. ここでいう「珍しい生物」とは、萩・長門・下関の漁師さんや一般の方々、研究者がめったに見ることのなかった生物を指します。こうした生物が1984〜2004年の20年間に実に187種、数えきれたもので約800個体も見つかりました(群れなどもあったので実際には1,000個体は超えるでしょう)。そのうち、熱帯の海が出身のものが134種もありました。また、日本には8種だけといわれているフリソデウオのなかまの深海魚・・・これらは全国的にめったに見られない「稀種」といわれているのですが、6種29個体も見つかりました。 |
| Q2. たとえばどんな種類の生物が見つかったの? |
| A2. A1に1984〜2004年に珍生物が187種見つかったと書きましたが、その中身を見ると、藻類1種、海綿動物(カイメンのなかま)1種、刺胞動物(サンゴやクラゲなど)3種、軟体動物(貝やイカ・タコなど)49種、節足動物(エビやカニなど)5種、棘皮動物(ウニやヒトデなど)5種、魚類120種、は虫類(ウミヘビやウミガメ)3種となっています。代表的な種類の写真が載っているページを図3〜5に掲載しましたので、主な顔ぶれをご覧ください。 |
| Q3. 熱帯の生物がよく見つかったのはなぜ? |
| A3. 地球上の大きな海(大洋)は、約20年とか50年という周期で水温が高くなったり低くなったりしていて、最近の北太平洋では1970年代に低めに、1980年代の終わりごろに高めになったことが知られています。その1980年代終わりごろからの影響が、海峡などでつながっている日本海にもおよび、山口県あたりの水温も1986年までは低めだったのが1987年からは高低をくり返すようになり、さらに1997年からは高めに変わったようです。こうして山口県の日本海側の水温が高めになったことで、特に1990・1991年ごろから熱帯出身の生物たちがたくさんやってきて、私たちの目によくつくようになったものと思われます。 |
| Q4. 深海の生物がよく見つかったのはなぜ? |
A4. フリソデウオやリュウグウノツカイなどの「深海魚」は、ふつうは水深200mより深い中層にいると考えられています。それなのに、海底が浅い大陸棚になっている山口県の海によく現れるのは不思議としかいいようがありません。なぜ彼らがよく現われるのか、私たちは次の2つの説を考えています。
|
| Q5. 珍しい生物が現われるのは、何らかの災害の前ぶれ? |
| A5. これについても、まだ何ともいえません。たとえば、「萩で熱帯魚がよく現れているのは、温室効果ガスによる地球温暖化のあらわれでは?」とよく聞かれます。しかし、A3に書いたように、大洋の水温は昔から約20年とか50年の周期で高くなったり低くなったりしているので、人間活動だけが水温が高めになる原因とは言い切れないでしょう。また、「深海魚が現われると地震が起こる」との話も耳にすることがありますが、地震の発生例と深海魚の出現例がどれぐらい対応しているのか、そして、地震が起こると海中でどんなことが起こり生物にどう影響を与えるのかが分からなければ、判断は難しいでしょう。いずれにしても、まだ研究は始まったばかりです。これからいろいろな分野の研究者が手をつないで調査したり論議していくことで解明されることでしょう。 |
最後に、今回の研究報告は漁業関係者の方々、ダイビングショップ・ダイバーの方々、一般市民のみなさま、小中学生のみなさまからの標本や情報の提供があってこそまとめることができたことを、この場をお借りして深くお礼申し上げます。今後も萩博物館は、どんな小さな発見でも、みなさまからの情報をお待ちしています。
(平成18年6月12日作成)