宅配便 2

ルリガイ
−神出鬼没の漂流貝−

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1■市民の方からの 貴重な一報

 去る10月23日、市民の方から郷土博物館に、萩市菊ヶ浜にルリガイが大量に漂着しているとの連絡が入りました。ルリガイはちょっと変わった巻き貝の仲間で、いつでも見られるような貝ではありません。そこで早速、職員ほか数名が菊ヶ浜、指月小浜、西ノ浜に調べに行ったところ、各所を数十分間歩いただけで計68個体も採集することができました。おそらく、この3つの海岸の全域では何百ものルリガイが漂着したものと思われます。

2■ルリガイとは?

 ルリガイ(瑠璃貝)はその名の通り、ラピスラズリとして知られる瑠璃(るり)を連想させる、神秘的な青紫色の殻をもった巻き貝です。この貝は、ふつうの巻き貝のように海底を這うことはなく、ネバネバした物質で浮嚢(ふのう)(=泡のいかだのようなもの)を作り、それにぶら下がって海の表面を漂って暮らしています。実際、今回萩の海岸に漂着したルリガイの多くにも、中身の軟体と共に浮嚢が付いていました。このようにしてルリガイは海流に乗って全世界の温かい海を漂流しているため、風や海流の条件がそろった時でなければ海岸に寄ってくることのない、神出鬼没の貝なのです。

3■ルリガイの食べ物

 ルリガイは生きている時、一緒に浮かんで暮らしているクラゲの仲間を襲って食べます。今回、数百個体ものギンカクラゲと数十個体のカツオノカンムリが一緒に打ち上げられていましたが、これらは両方ともルリガイの餌となるクラゲの仲間です。ちなみに、人が刺されると激痛が走る猛毒のカツオノエボシ(通称「電気クラゲ」)も、このルリガイにはかなわず食べられてしまいます。

4■なぜこんなに多くの ルリガイが萩の海岸に?

 こんなに多くのルリガイが萩の海岸に漂着するのは、少なくとも記録の上では過去になかったことです。山口県水産研究センターの観測情報によると、10月下旬の萩の沖合(萩沖北北西15マイル)の海表の温度は平年より1度以上も高い約22.5度もありました。また、ルリガイの大漂着があった10月23日前後には西北西〜北西の風がやや強めに吹いています。これらのことから、温かい対馬海流が南から例年以上に多くのルリガイを萩沖に運んできたところに海から陸へ強い風が吹き、それによってたくさん萩の海岸に漂着した可能性が考えられます。

拡大詳細図解入り写真

漂着物の中のルリガイとギンカクラゲ

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5■これからは 漂着物の季節

 今年の秋は平年より萩沖の水温が高い状態が続いている上、これからの萩は北西の風が特によく吹く季節になります。そのため、これから萩の海岸を注意深く見ていけば、まだまだいろいろな生物が漂着しているのが見つかるかもしれません。海岸で変わった生き物や興味深い物体を見つけられたら、是非、郷土博物館までご一報ください。なお、これからの海は時化やすくなりますので、海岸に出かける際は十分気をつけて、一人ではなく必ず複数でお出かけください。

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漂着物が点々と打ち上げられた菊ヶ浜  
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(平成15年11月11日作成)