1■ ソウシイザリウオ確認 |
去る4月15日、山口はぎ漁協の市場長・藤田
勲(ふじた いさお)さんから「珍しい魚が見つかった」との連絡が萩市郷土博物館に入りました。早速、当館がその魚の寄贈を受け、海洋生物担当の学芸係・堀が形態を詳しく観察しました。その結果、ソウシイザリウオという魚であることが分かりました。 採集地: 萩市見島近海 この魚は郷土博物館にてホルマリン液浸標本として資料化しました。この場を借りて、寄贈してくださった藤田さんに深くお礼申し上げます。 |
2■ この魚の姿と暮らし |
ソウシイザリウオは岩礁にすむアンコウ目イザリウオ科の魚で、胸鰭(むなびれ)と腹鰭(はらびれ)が手足のような形をしており、それで海底をヨチヨチ歩きます。また、背鰭(せびれ)の第1棘(だいいちきょく)つまり一番前の棘が釣りざおのように変形し、さらにその先端が球根のようにふくらんでおり、これを擬似餌(ぎじえ)のように振って小魚をおびき寄せて食べます。 |
3■萩近海で20年ぶり |
この魚は千葉県以南のインド・西太平洋に分布することが知られています1)。萩近海では、1985年3月29日に萩市大島の定置網で漁獲されたことが「サラサイザリウオ」の名で記録されていますが2)、それ以外には全く発見例がありませんでした。今回の見島での漁獲は約20年ぶりの、しかも萩近海でわずか2回目の発見となります。日本海の全域においても目撃例はほとんどないものと思われます。この魚は南方系の種であるため、幼魚が対馬海流に乗って萩近海に流れ着き、ここで成長または繁殖したものと考えられます。 |
4■ダイバーの人気者 |
イザリウオの仲間は、その愛嬌のある姿や行動のためダイバーにとても人気があります。特にソウシイザリウオは大型で稀にしか見られないため、伊豆半島などではこの魚を見るために潜水する人がいるほどです。近年の萩近海は海水温が高いため、これからも見島でこの魚が発見される可能性があり、ダイビングポイントとしての見島の今後に期待がもてます。
(平成16年5月25日作成) 【引用文献】 |