宅配便 9
タカラガイ調査の結果報告(3)
(16年4月〜5月分

 


タカラガイ採集を手伝ってくださった
末武さんと河上さん
(16年5月12日)

 


ヤクシマメダカラ説明(拡大)

 

1■4〜5月のタカラガイ調査

 昨年12月から月2回おこなっている萩市倉江ノ浜でのタカラガイ調査が、5月下旬で12回を迎えました。ここで、4〜5月分の結果を報告します。
 4〜5月の調査日は、4月13日と27日、5月12日と26日でした。そのうち、4月27日には末武晃さん(萩市在住)が、5月12日には末武さんと河上勲さん(萩市在住)がタカラガイ採集を手伝ってくださいました。記してお二方に感謝いたします。

2■ヤクシマダカラの幼貝を発見!

 5月12日の調査の際、館職員・堀が当館のタカラガイ調査では初めての「ヤクシマダカラ」を採集しました。ヤクシマダカラは熱帯西太平洋とインド洋に分布し、日本では房総半島以南の太平洋側と山口県以南の日本海側から知られています1)。山口県ではこれまでに豊北町で3回、萩市で3回の計6回しか記録がなく2)、今回が山口県で7例目となります。これで、当館タカラガイ調査で採集されたタカラガイの種数は計13種となりました。
 さて、このたび採集されたヤクシマダカラは、写真のように、貝殻の入り口にギザギザがありません。実は、このヤクシマダカラは幼貝、つまり、まだ子供の貝なのです。タカラガイ科の貝は、子供の頃は普通の巻貝とあまり変わらない貝殻をもっていますが、性的に成熟する頃に貝殻の入り口が内側に狭まってギザギザができ、殻の質もギュッと引き締まり、成貝(大人の貝)になるのです。その成長過程が分かるよう、左の写真には今回採集されたヤクシマダカラの幼貝と、1996年に同じく倉江ノ浜で採集されたヤクシマダカラの若貝(やや成長が進んだ幼貝)、そして、南洋で採集されたヤクシマダカラの成貝を順に並べてみました。
 山口県でこれまでに確認された7個体のヤクシマダカラのうち、成熟したものは1個体だけで、それ以外の5個体は幼貝でした2)。ヤクシマダカラは幼生の頃(プランクトンのように海を漂っている幼い時期)に南方から暖流にのって萩に流れ着いて成長することがあるものの、ほとんどが成貝になる前に冬の寒さで凍え死んでしまい、それが海岸に打ち上げられるものと考えられます。

3■採れたタカラガイの内訳

 4〜5月中の調査で採集されたタカラガイの種類・数と、昨年12月からの全ての採集結果を合わせたのが左下の表です。採集されたタカラガイの総数は7749個体となりました。その内訳は、「メダカラ」が95%強でトップ、2番目の「チャイロキヌタ」は4%弱、残りの11種は合わせてわずか0.8%弱と、前回の報告時とほとんど同じ結果となりました。この割合は、年や季節によってどのように変化するでしょうか? また、海水温や気象とはどのような関係があるのでしょうか? このあたりについては、今後もしばらく調査を続け、データが増えましたら考察したいと思います。

4■今後の調査の予定

 今後も月2回ほど小潮の日に調査をおこないます。次回以降の調査の日程は下記の通りですので、朝、調査中の職員を見かけられましたら声をおかけください。調査への飛び入り大歓迎です。


日 時: 6月10日(木)、6月24日(木)、7月9日(金)、7月23日(金)。朝7時から約1時間(小雨決行)。8月以降の日程は、7月下旬ごろにこのホームページでお知らせします。
場 所: 萩市倉江ノ浜 (県道64号・萩三隅線の道脇から小道を伝って砂浜に下りたあたり)


(平成16年6月8日作成)


参照文献
1) 堀 成夫, 2000: タカラガイ科. In: 奥谷喬司(編) 日本近海産貝類図鑑, 224-241. 東海大学出版会, 東京.
2) Hosaka, K., T. Irie & T. Sugimura, 1997: The family Cypraeidae (Caenogastropoda) of Yamaguchi Prefecture, western Japan. The Yuriyagai (Journal of Malacozoological Association of Yamaguchi), 5(1/2): 127-183.