○萩市救助業務処理規程
平成17年3月6日
消防本部訓令第20号
(趣旨)
第1条 この規程は、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第36条の2の規定に基づく救助業務を行うために必要な事項を定めるものとする。
(1) 要救助者 災害により生命又は身体に危険が及んでおり、かつ、自らその危険を排除することができない者をいう。
(2) 救助事故 要救助者の生命又は身体に現実の危険が及んでいる事故であり、要救助者の存在が確認されているほか、通報時又は現場到着時において要救助者の存在が予想される状況における事故をいう。
(3) 救助活動 救助事故に伴う要救助者を消防機関が人力、機械力又は器具等を用いて、その危険を排除し、安全な場所に救出する活動をいう。
(4) 救助工作車 救助活動を行うために、装備又は資器材を積載し、救助活動に出動する自動車をいう。
(5) 救助分隊 隊員と救助活動を行うために必要な資器材を積載した車両で編成する隊をいう。
(救助事故の種別)
第3条 救助事故の種別を次の9種に分けるものとする。
(1) 火災事故 火災現場において、直接火災に起因して生じた事故をいう。
(2) 交通事故 すべての交通機関相互の衝突、接触又は単一事故若しくは歩行者等が交通機関に接触したこと等による事故をいう。
(3) 水難事故 水泳中の溺者又は水中転落等による事故をいう。
(4) 風水害等自然災害事故 暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、雪崩、地すべりその他の異常な自然現象に起因する災害による事故をいう。
(5) 機械による事故 エレベーター、プレス機械、ベルトコンベアその他の建設機械、工作機械等による事故をいう。
(6) 建物等による事故 建物、門、柵、へい等の建物に附帯する施設又はこれらに類する工作物の倒壊による事故、建物等内に閉じ込められる事故、建物等に挟まれる事故等をいう。
(7) ガス及び酸欠事故 一酸化炭素中毒その他のガス中毒事故、酸素欠乏による事故等をいう。
(8) 破裂事故 火災現場において直接火災に起因して生じた事故以外のボイラー、ボンベ等の物理的破裂による事故をいう。
(9) その他の事故 前各号に掲げる事故以外の事故等で、消防機関による救助を必要とした事故をいう。
(出動区域)
第4条 救助分隊の出動区域は、萩市消防本部及び消防署の設置等に関する条例(平成17年萩市条例第248号)第4条に定める消防署の管轄区域とする。ただし、消防長が特に必要があると認めた場合は、この限りでない。
(救助分隊の編成)
第5条 救助分隊の編成は、救助工作車その他の消防用車両及び隊員をもって編成する。
(隊長の任務)
第6条 救助分隊を編成する救助分隊員(以下「隊員」という。)のうち一人は、救助分隊長(以下「隊長」という。)とする。
2 隊長は、上司の指揮監督を受け、救助分隊の隊務を統括する。
(隊員の任務)
第7条 隊員は、隊長の指揮監督に従うとともに、相互に連携し、救助分隊の隊務に従事する。
(隊員の訓練)
第8条 消防長は、隊員に対し救助業務を行うに必要な学術及び技能を習得させるため、常に教育訓練を行うよう努めるものとする。
(救助分隊の出動)
第9条 消防職員は、救助事故が発生した旨の通報を受けたとき、又は聞知したときは、当該事故の発生場所、事故概要、要救助者の数及び被害の程度等を確認し、その旨を所属長を経て消防長に報告するとともに救助受付連絡簿(別記第1号様式)に記録し報告するものとする。
2 消防署長は、前項の報告を受けたときは、直ちに救助分隊を出動させるものとする。
(安全管理)
第10条 救助分隊の安全管理対策は、救助活動における安全管理細則(別記)のとおりとする。
(救助業務の実施)
第11条 隊長は、救助現場に出動したときは、直ちに人員及び機材を活用して人命、身体の保護を旨として要救助者の救出に当たり、要救助者の観察を行いながら救助活動を行うものとする。
2 隊長は、消防隊及び救急分隊との連携を密にし、要救助者の救出後は、必要に応じて救急分隊に引き渡すものとする。
第12条 隊長は、救助活動中に要救助者の生命が危険であると認められる場合は、救助現場に医師の派遣を要請し、必要な措置を講じるものとする。
(関係機関への連絡等)
第13条 隊長は、救助事故の状況に応じて当該事故の関係機関に速やかに連絡をとり、互いに協力することによって被害の軽減に努めるものとする。
2 隊長は、救助事故の原因に犯罪の疑いのあるもの又は交通事故によるもの等、警察に連絡する必要がある要救助者を救助しようとするとき、又は救助したときは、直ちに所轄の警察に通報するとともに、できる限り現場保存に努めるものとする。
(救助活動の中断)
第14条 消防長又は消防署長は、災害の状況、救助活動に係る環境の悪化、天候の変化等から判断して救助活動を継続することが著しく困難であると予測される場合又は隊員の安全確保を図るうえで著しく危険であると予測される場合においては、救助活動を中断することができるものとする。
2 各種記録及び報告等の文書の保存期間は、法令等で特別の定めがあるものを除くほか、5年間とする。
(救助資器材の維持管理)
第16条 隊長は、救助資器材の維持管理のため定期に点検を行うものとする。
(災害救助法との関係)
第17条 災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された場合においては、同法の規定に基づいて救助活動に協力するものとする。
(業務計画)
第18条 消防長は、特殊な救助事故が発生した場合における救助業務について、あらかじめ計画を作成しておくものとする。
2 消防長は、前項に定める計画に基づいて年1回以上訓練を行わせるものとする。
附則
この訓令は、平成17年3月6日から施行する。
附則(平成17年9月1日消防本部訓令第23号)
この訓令は、平成17年9月1日から施行する。
附則(平成19年4月1日消防本部訓令第4号)
この訓令は、平成19年4月1日から施行する。
附則(平成28年1月1日消防本部訓令第3号)
この訓令は、平成28年1月1日から施行する。
別記(第10条関係)
救助活動における安全管理細則
第1 救助活動時における安全管理の責務
救助活動時における安全管理の基本は、警防活動と同様に平素の管理者の安全対策及び安全教育の責務と現場の指揮本部長以下各級指揮者の安全確保責務と合わせて、隊員の安全確保の基本は自己にある。
第2 救助活動時の部隊運用
救助活動時の部隊運用は、救助事象により一般的な救助特命出動と大規模な救助事象に対応する救助特別出動とに区分される。いずれの場合においても、部隊の規模、車種等は変わるが、指揮者を中心とした明確な指揮統制による各隊の一糸乱れぬ行動が安全管理の基本である。
第3 救助活動の原則
一般的な救助活動は、ひとつの救助という目標に向かって任務を分担し、統制し、安全を確保しつつ進行させていくことが可能であり、活動に余裕があれば危険に対する予知、予測も可能である。そのためには、活動の基本をよく理解し、いかなる事象に直面しても適切に対応できる臨機の判断力、行動力を養い、隊員相互が安全に配意し合う規律と信頼に裏付けされた部隊育成が安全な活動の前提である。
(1) 救助の優先順位
救助活動は、要救助者の「救命」を最優先とし、次いで「身体の救出」、「精神的・肉体的苦痛の軽減」、「財産の保全」の順とする。
(2) 組織活動
救助活動は、規律厳正にして、指揮者の指揮のもと一致団結して組織的な部隊活動を基本とし、私意的な単独行動は絶対にしてはならない。
(3) 消防警戒区域の設定
救助活動の障害と二次的災害を防止するために、活動及び安全の確保に必要な範囲を消防警戒区域として設定し、ロープ等により表示する。なお、必要により警戒員を配置したり、現場の警察官と連携を密にする。
(4) 資機材の現場調達
救助活動現場又は現場付近に活動上有効な資機材がある場合は、当該資機材を操作員とともに調達して活用する。
(5) 活動スペースの確保
救助活動のために準備した資機材が、活動時の障害とならないように、資機材の搬入及び車両の停止位置等に配意して、有効なスペースを確保する。
(6) 複合障害の排除
事故現場に、危険物、ガス、電気等の障害が複合する場合には危険の大きい障害から順次排除してから救助活動を行う。
(7) トータル被害の軽減
救助活動に際しては、要救助者の容態及び事故内容を把握し、救出時は安易に過剰な破壊等をすることなく、できるだけ最小の破壊で、かつ、迅速な方法を選択し、トータル被害の軽減に努める。
(8) 関係者の活用
救助活動に当たっては、現場の関係者や有識者、技術者等の知識、技術を積極的に活用する。
(9) 関係機関との連携
現場で他の機関等と共に活動する場合は、それぞれの任務分担、手順、方法等を協議してから活動する。
(10) プライバシーの保護
救助活動時には、要救助者やその家族等の心理状態を考慮し、必要に応じて、衆人の目から現場を遮蔽又は現場から関係者を遠ざける等の処置をとり、要救助者等のプライバシーの保護に配慮する。
(11) 安全管理
救助活動に当たっては、要救助者はもちろん隊員や関係者等の二次災害の防止に万全を期す。また、救助活動時に要救助者の血液等の接触には十分注意し、必要によりB型肝炎、エイズその他の感染防止に配意し、必要によりディスポーザブルのビニール手袋を着装する。なお、救急隊員は、定期的にB型肝炎の予防接種をする。
第4 救助事象別の安全管理
各救助事象には、特有の危険要因や配慮すべき事項が存在する。以下は事故種別の安全管理の基本事項である。
(1) 自動車事故
ア 一般的留意事項
(ア) 事故の発生によって車体は破損、変形するなど不安定な状況になり、救出時の活動により要救助者の負傷部位の悪化も配意しなければならないため、慎重な行動が要求される。
(イ) 燃料の漏洩等により火災の発生する危険がある。
(ウ) 活動スペースが一般的に狭いために、隊員の行動が制限され危険が高い。
イ 安全管理
(ア) 現場を通過する車両は、事故の状況を見ながら運転していることが多いので、特に注意し、活動スペースを十分に確保する。
(イ) 流出した燃料等がある場合は、事前に除去するか、又は消火手段を講じてから救助活動を行う。
(ウ) 不安定な状態にある車両及び積荷は、除去するか、又は固定してから救出する。
(エ) 流出したオイル等で足元が滑りやすくなるので、活動の細部にわたり隊員の安全を確保してから行う。
ウ 道路等の部隊運用
幹線道路での活動は、二次災害の危険が大きいので、救急隊のほかに直近のポンプ隊を運用し、早期救助対応と併せて安全のための二次災害の防止、情報収集の任務に当たる。
(2) 列車事故
ア 一般的留意事項
(ア) 一般に活動が広範囲となり、鉄道関係者との連携が十分でないと、停車中の列車が動いたり、乗客の動揺や扉の誤操作が起きる危険がある。
(イ) 軌道敷及びその周辺の足場が不安定で、枕木やレールにつまずき、転倒する危険がある。
イ 安全管理
(ア) 責任者、関係者と接触し、列車の運行状況等を聴取して安全措置を確認する。
(イ) 事故現場が踏切付近の場合は、現場付近を通過する一般車両に十分注意するとともに、必要によっては隊員に交通整理させる。なお、警察官等が現場にいる場合は、交通整理を依頼する。
(ウ) 玉石、レールなどによる隊員の滑り、転倒には十分注意する。
(3) 昇降機事故
ア 一般的留意事項
(ア) エレベーター事故では、ブレーキ解除によるカゴ、リフト等の急速な上昇及び下降又は昇降路への転落等の危険がある。
(イ) エレベーターの閉じ込め事故で比較的緊急性がない場合は、いたずらに救出を急ぐことなく、安全管理に万全を期した行動に配意するとともに、多少時間を要しても専門技術者の協力を得る救出方法を考慮する。
イ 安全管理
(ア) 救助活動は、関係者と良く連携し、綿密な救出手段の打合せをした後、統制のとれた行動をとる。
(イ) 昇降機は、活動開始前に必ず電源遮断及びブレーキの作動を確認し、上昇及び下降防止処置を行う。
(ウ) 昇降路内での活動並びに要救助者の救出時は、必ず命綱をとって身体の確保を行う。
(エ) 活動スペースの狭い場所や足場の悪い状態での行動は、救助隊員及び要救助者の安全を確保してから行う。
(オ) 火花を発する器具を使用する場合は、引火等の危険がある物質を事前に除去するか、又は消火手段を講じてから行う。
(カ) 活動範囲内の不安定な状態にある荷物等は、除去するか、又はロープ等により固定後救出を行う。
(4) 建物・工作物事故
ア 一般的留意事項
建物、建物附帯施設又は工作物等に起因する救助活動は、倒壊、挟まれ、落下等一般的に不安定で、かつ、狭い場所で発生するため、活動上の障害も多く、隊員の二次的事故発生危険も高い。
イ 安全管理
(ア) 活動スペース付近には、救助隊員以外は接近させない。
(イ) ガラスを破壊する場合には、ガムテープ等を張って飛散防止の処置を講じる。
(ウ) 破壊したドアの転倒に注意する。
(エ) 便槽、浴槽等への転落防止に配意する。
(オ) 高所での作業を行う場合は、安全帯等により安全確保を行い、転落に注意する。
(5) ガス・酸欠事故
ア 一般的留意事項
(ア) 可燃性ガスは、その濃度によりわずかな火花でも爆発の危険がある。
(イ) 酸欠空気は、一呼吸で意識を失うほどの危険性があるので、呼吸保護器具等は不可欠であり、救助活動をするときは面体のずれ等に細心の注意を払う必要がある。
イ 安全管理
(ア) 隊長は、隊員の行動を強く統制し、単独行動はさせない。
(イ) 危険性ガスの特定をして安全に対処する。
(ウ) 隊長は、危険区域内に進入する隊員の体調、装備のチェックを行うとともに、氏名、進入時間等を記録する。
(エ) 可燃性ガス事故現場付近では、わずかな火花を発しても爆発等の二次災害発生につながるおそれのあることを再認識して、火花の発生するおそれのある機器、設備等の操作又は火花の発生するおそれのある行為をしないよう十分に留意し徹底する。
(オ) 測定器の目盛りが振れなくても、臭気を感じるときは、むやみに屋内進入しない。
(カ) 関係者等に協力を求める場合は、消防隊員と同等以上の安全措置を講じる。
(キ) 使用した装備は、点検整備を確実に行い、毒性物質が付着した場合には、洗浄等により完全に除去する。
(6) 感電事故
ア 一般的留意事項
感電事故の救助活動又は電気設備等の付近で発生した救助活動では、隊員が通電部に容易に接触し、感電する環境条件にあるため、不用意に電線、電気機器への接近を避けるとともに、電源遮断の確認を行う必要がある。
イ 安全管理
(ア) 原則として、電力会社又は工事関係者に電路遮断確認及び電源遮断措置を実施させる。
(イ) 必要に応じて、適宜な場所に全員を配置する。
(ウ) 高所での作業は、使用資器材をロープ等で結着し、落下による事故防止を図る。
(エ) 電路を遮断してからの作業を原則とするが、やむを得ず作業を行う場合は、耐電衣等絶縁用保護具を着装し、感電防止に万全を期す。
(7) 水難事故
ア 一般的留意事項
(ア) 陸上から救助できる場所としては、護岸、河川敷及び橋りょう等があり、浮艇、乗艇、要救助者救出の活動拠点となる足場の不安定な場所を多くの隊員が往来するため転倒や水中への転落の危険がある。
(イ) 水難救助隊員の潜水活動は、水温、流速、透明度、水圧等により、物理的及び生理的作用を受け、直接生命にかかわる危険が潜在している。
(ウ) 舟艇は、波の影響を受けて大きく動揺し、また、隊員の移動、要救助者の収容等で、艇のバランスが崩れ、隊員が水中に転落する危険がある。
イ 安全管理
(ア) 船舶等が航行する水域における潜水活動は、「潜水作業中」を表示する信号旗を浮標又は警戒する船艇に掲げておく。
(イ) 乗艇する隊員は、必ず救命胴衣を着用するとともに、船艇の定員を厳守する。
(ウ) 緊急の場合で泳いで救助する場合は、隊長は隊員のうちから泳力があり体調の良好な者を指定する。また、原則として救助員に確保ロープを使用し、陸上等で安全確保を行い、浮環等を携行して救助に活用する。
(エ) 要救助者へ接近するときは、抱きつかれないよう背後から行う。抱きつかれたときは、水中に身を沈めてかわす。
(8) 土砂崩壊事故
ア 一般的留意事項
(ア) 土砂崩壊事故は、家屋の流出等を伴う広範囲にわたるものや、掘削工事現場及びトンネル内等の崩壊事故がある。
(イ) 土砂崩壊時の救助活動は、再崩壊のおそれが大きく、土砂は思ったより重量があって、作業が思うように進展せず長時間にわたったり、狭い場所で活動人員が制限される等二次的な災害発生要因が多々ある。
イ 安全管理
(ア) 隊員個々の判断による単独行動は慎む。
(イ) 崩壊危険等を考え安全な場所を確認して進入する。
(ウ) 二次崩壊の防止措置を講じるとともに、救助器具及び現場にある機材を活用して二次災害の防止を図る。
(エ) 統制者を決め、立入禁止及び行動統制を行い、活動環境の保持と管理の徹底を図る。
(オ) 安全に対する装備等を十分に確認したうえ活動を開始する。
(カ) 常に監視警戒員を指定し、情報収集と報告及び連絡の徹底を図る。
(キ) 指揮者は、崩壊等の危険が予想される警戒区域等には、ロープを張り、全隊員に周知徹底させ進入制限をする。
(ク) 資器材の搬送、取扱い等の動き始めに際しては、その都度周囲の安全を確認し、二次的災害の未然防止に配意する。