○萩市犯罪被害者等支援条例
令和7年6月18日
条例第21号
安全で安心して暮らせる地域社会を実現することは、全ての市民の願いである。しかしながら、誰もがある日突然、犯罪等の被害者又はその家族若しくはその遺族となる可能性がある。そして、犯罪被害者等は、犯罪等による直接的被害にとどまらず、これに起因する心身の不調や経済的な問題、更には、周囲の偏見や無理解による心ない言動等二次的被害にも苦しめられている。
こうした中において、安全で安心なまちづくりを推進するためには、犯罪被害者等の被害からの回復と被害の軽減を図るとともに、犯罪被害者等を支える地域社会の形成に向けた取組を進めることが必要である。
こうした認識の下、犯罪被害者等が孤立することなく、市民が安全に安心して暮らすことができる地域社会を実現するため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)に基づき、本市における犯罪被害者等への支援に関する基本理念を定め、市、市民等、事業者及び学校等の責務を明らかにし、犯罪被害者等への支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、犯罪被害者等への支援に関する施策を総合的に推進し、もって犯罪被害者等が受けた被害の回復及び軽減を図ることを目的とする。
(1) 犯罪等 犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
(2) 犯罪被害者等 犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。
(3) 二次的被害 犯罪等による直接的な被害を受けた後に、周囲の者の配慮に欠ける言動、インターネット等による誹謗中傷、過剰な取材等により、犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛、身体の不調、名誉の毀損、平穏な生活の侵害、プライバシーの侵害、経済的な損失その他の被害をいう。
(4) 再被害 犯罪被害者等が、当該犯罪等の加害者から再び受ける犯罪等による被害をいう。
(5) 市民等 市内に居住又は通勤若しくは通学する者をいう。
(6) 事業者 市内において事業を営む個人、法人その他の団体をいう。
(7) 学校等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条第1項に規定する児童福祉施設をいう。
(8) 関係機関等 国、山口県その他の地方公共団体、警察、犯罪被害者等への支援を行う公共的団体及び民間支援団体その他の犯罪被害者等への支援に関係するものをいう。
(基本理念)
第3条 犯罪被害者等への支援は、犯罪被害者等が個人の尊厳を重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利が尊重されるよう配慮して行われなければならない。
2 犯罪被害者等への支援は、犯罪等による直接的な被害、二次的被害及び再被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて、犯罪被害者等のプライバシーに配慮し、迅速かつ適切に行われなければならない。
3 犯罪被害者等への支援は、犯罪被害者等が被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援を途切れることなく受けることができるよう行われなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、犯罪被害者等への支援に関し、市民等、事業者、学校等及び関係機関等との適切な役割分担を踏まえて、市の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(市民等の責務)
第5条 市民等は、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等への支援の必要性について理解を深め、二次的被害及び再被害が生じないように十分配慮するよう努めるものとする。
2 市民等は、市が行う犯罪被害者等への支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等への支援の必要性について理解を深め、犯罪被害者等の労働環境の整備その他必要な措置を講じるとともに、その事業活動を行うに当たって、二次的被害及び再被害が生じないように十分配慮の実施に努めるものとする。
2 事業者は、市が行う犯罪被害者等への支援に協力するよう努めるものとする。
(学校等の責務)
第7条 学校等は、犯罪被害者等である在学者及び施設利用者(以下「在学者等」という。)が置かれている状況を踏まえ、学校等での活動において二次的被害及び再被害を受けることがないよう、家庭及び関係機関等と連携して、児童又は生徒の発達段階に応じた適切な支援を行うとともに、他の児童又は生徒の受ける影響についても十分配慮するよう努めるものとする。
2 学校等は、市が行う犯罪被害者等への支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(相談及び情報の提供等)
第8条 市は、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、犯罪被害者等が直面している様々な問題について相談に応じ、情報の提供、助言その他必要な支援を行うとともに、関係機関等との連絡及び調整を行うものとする。
2 市は、犯罪被害者等への支援に関する相談に応じるとともに、必要な情報の提供及び助言を総合的に行うための窓口を設置するものとする。
3 市は、犯罪被害者等からの相談を受けるときは、当該犯罪被害者等の心身の状況等に配慮した対応に努めるものとする。
(経済的負担の軽減)
第9条 市は、犯罪被害者等が犯罪等により受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、必要な支援を行うものとする。
(心身に受けた影響からの回復)
第10条 市は、関係機関等と連携し、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から早期に回復し、日常生活を円滑に営むことができるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な支援を行うものとする。
(安全の確保)
第11条 市は、関係機関等と連携し、犯罪被害者等が二次的被害及び再被害を受けることを防止し、その安全の確保を図るため、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保その他必要な支援を行うものとする。
(居住の安定)
第12条 市は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るため、住居に関する情報の提供等必要な施策を講じるものとする。
(雇用の安定)
第13条 市は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るとともに、職場における二次的被害及び再被害を防止するため、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等への支援の必要性について事業者の理解を深めるための啓発活動その他必要な施策を行うものとする。
(市民等の理解の増進)
第14条 市は、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等への支援の必要性並びに二次的被害及び再被害を防止することの重要性について市民等の理解を深めるよう、広報、啓発活動その他の必要な施策を講じるものとする。
(民間支援団体との連携及び協力)
第15条 市は、犯罪被害者等への支援を行う民間の団体との連携及び協力に努め、その活動の促進を図るため、情報の提供その他必要な施策を講じるものとする。
(支援の制限)
第16条 市は、犯罪被害者等への支援を行うことが社会通念上適切でないと認められるときは、犯罪被害者等への支援を行わないことができる。
(委任)
第17条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。