萩市見島のダイビングポイントにて、これまで日本海からは記録されたことのなかった熱帯性ヒトデ「オオフトトゲヒトデ」の、日本最大級の個体が発見されました。
・ ヒトデの大きさ: 輻長(ふくちょう:体の中心から腕の先端までの長さ) 37.0 cm; 直径(体全体の幅)約70 cm
・ 発見地: 萩市見島のダイビングポイント「イラガハイ丘」 水深24 m
・ 発見日: 平成16年6月5日; 発見者: 片山佳久(かたやま よしひさ)氏。
■ 発見から同定までの経緯
本年6月5日、萩市見島のダイビングサービス「クラブノア見島」のインストラクター・片山佳久氏と萩市郷土博物館学芸係の堀成夫が、萩市見島のダイビングポイント「イラガハイ丘」にて海洋生物観察をおこないました。その際、水深24
mの岩礁で片山氏が直径70 cmを超える巨大なヒトデを発見しました(写真1, 2)。
その後、堀がこのヒトデの体の各部を撮影し、画像を日本動物分類学会会員のヒトデ専門家・佐波征機(さば まさき)氏に送って鑑定を依頼したところ、「オオフトトゲヒトデ」と判明しました。
■ オオフトトゲヒトデの特徴
フトトゲヒトデ科の一種で体の背面が淡いピンク色、腕の先端がシナモンブラウン色。日本沿岸で最も大きくなる種類のヒトデ。夜行性で、海底を分速1.5 mで動き回るといわれています。
ハワイ、フィリピン、ニューカレドニア、ニューギニアに分布し、日本では奄美大島、沖縄本島、小笠原諸島、および紀伊半島の枯木灘と串本で発見されています。日本海からの発見記録はありませんでした。
■ 見島でオオフトトゲヒトデが発見されたことの意義
今回の見島でのオオフトトゲヒトデの発見は日本海で初めてのものとなります。また、このヒトデの日本での最大記録は鹿児島県奄美諸島の加計呂麻(かけろま)島産の輻長37.6
cmであるため、この見島産個体(輻長37.0 cm)はそれに準ずる日本最大級のものといえます。このサイズに達するまでに数年はかかると思われるため、少なくとも数年前に浮遊幼生が熱帯海域から対馬暖流に乗って見島に運ばれ、ここに定着して成長したと考えられます。
■ 見島のオオフトトゲヒトデの今後について
今後、萩市郷土博物館は「クラブノア見島」と連携し、この熱帯系のヒトデが見島の海で越冬して今後も生育し続けるかどうか、また、周辺にオオフトトゲヒトデが他にも生息していないかなどを観察・調査する予定です。
また、8月24日現在、このオオフトトゲヒトデの体表には体長1 cmほどのエビ「ヒトデヤドリエビ」1個体が共生しているのが確認されています(写真3)。このエビについても同様に生育・生息状況を観察していきます。
今年は萩近海の海水温が高いためか、ツマムラサキメダカラ(巻貝の一種)、ケアシガニ(カニの一種)など日本海で記録されたことのなかった熱帯系の海洋生物が確認されており、オオフトトゲヒトデもそうした例の一つである可能性があります。当館では今後もこうした生物全般の出現情報にも注意を払い、萩近海の生物の分布や環境の変化に迫りたいと考えています。
巨大ヒトデ「オオフトトゲヒトデ」を日本海で初めて見島で発見
(2004年8月19日記者発表)