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将来の萩の医療を考えるシンポジウム~中核病院づくりに向けて~を開催しました

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年10月8日更新

 9月12日、将来の萩の医療を考えるシンポジウムを萩市総合福祉センター多目的ホールで開催しました。

 市民や医療関係者約140人が参加し、病院経営統合により、医療従事者の確保や病院の経営に成果を上げている山形県酒田市の事例を学び、萩医療圏における中核病院のあり方について理解を深めました。

シンポジウム会場

主催者あいさつ

主催者あいさつ:萩市長 藤道健二

萩市長

基調講演

  ◆演題:地域における中核病院が果たす役割

        ~山形県・酒田市病院機構の事例から学ぶ 設立の経緯とその後の経過、今後の課題~ 

  ◆講師:栗谷義樹(くりやよしき) (地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構理事長)

栗谷理事長 基調講演

 酒田市での病院経営統合後の医療機能の集約や、地方独立行政法人のメリットを生かした柔軟な運営により経営改善に成功した経緯と今後の課題についてお話しいただきました。

 また、北荘内地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、民間の医療法人や社会福祉法人とともに設立された地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネットの取組について紹介されました。 

■参考 地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構

 2008年に当時の山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院が統合再編し、発足。医療機能の集約等を行い、黒字化に成功。今も良好な経営状態を持続されており、全国の病院統合モデルと評されている。

■参考 地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット

 2018年に北荘内地域の9つの法人が参加し、設立。理事長は栗谷氏が就任。医療、介護の新しい複合体を目指し、職員の相互派遣や病床の融通、高度医療機器の共同利用、薬品等の共同発注等、共同事業は多岐にわたる。地域全体で協力することで、経営の黒字転換を実現。 

概要

1.病院統合と山形県・酒田市病院機構設立、運営状況

<設置主体と経営形態>

〇経営を一体的に行うため、県と市が共同設置者となり、一般地方独立行政法人を選択した。

〇一般地方独立行政法人を選択した理由は、迅速効率的な運営、変化への対応などのほか、県職員と市職員の融合のために県でも市でもない運営形態が必要だったこと、当初に強い管理者権限を必要としたこと。

<独立行政法人化による経営改善>

〇統合再編は公立病院改革ガイドラインの3本の柱を全部含むものだったため、総務省から様々な支援があり、新法人の財務の安定化に大きく影響した。

<財務上の改善と効果>

〇薬品、診療材料の共同発注、在庫減、運用を一体で行い、委託契約を見直したことにより、大幅な経費削減となり、費用管理に大きな効果をもたらした。

<統合後の患者動態、財務指標の変化>

〇外来患者数、新規外来患者数ともに減少したが、新規入院患者数は増加した。

〇入院単価・外来単価の増加、病床回転率の上昇、平均在院日数の短縮など、統合再編の前後で業務構造の大きな転換が行われた。

<独自の業績手当>

〇前年度の総収支が黒字で当年度も黒字が見込まれる場合、業績手当の支給を給与規定で定めている。

<人口減少時代の病院のあり方>

〇急性期医療の提供には多額の費用と多くの人材が必要で、従来型の急性期機能を分散させるやり方は既に限界。

〇適切な集約化は費用の効率化をもたらし、経営改善にも、医師確保、医療レベルの向上にもつながる。

〇そのためには人口推移、疾病構成の将来見通しを元に医療圏を再構成しなければならない。

〇特に過疎化の進む地域ほど医療圏を見直して集約化を急がないと、手遅れになる地域が今後続出すると考える。

2.地域医療連携推進法人と共同事業、今後の課題

<地域医療連携推進法人>

〇急性期の医療需要は2015年をピークに既に減少局面に入っており、地域医療構想では病床が削減される。

〇一方、厳しい財政下で、今後の診療報酬改定の基本的な方向性では、病床区分に関わらず高回転化が求められる。

〇より広域の医療圏で競争に勝ち残るか、医療機関の統廃合を進める以外に選択肢はない。

〇法人設立に動いた理由は、深刻な経営環境の変化に対して危機感を共有したこと。

〇参加7法人の財務連結決算では、設立前は資金不足の状態であったが、設立後は資金超過となり、自己資本比率も上昇するなど、効果が出ている。

〇地域のニーズに合わせた医療、介護の新しい複合事業体を目指し、地域全体での黒字経営を目指す仕組みづくりが必要。

当日配布資料

当日配布資料(基調講演) [PDFファイル/5.73MB]

パネルディスカッション

  ◆テーマ:中核病院の望ましい姿とは

  ◆コーディネーター:藤道健二(萩市長)

  ◆パネリスト:栗谷義樹、綿貫篤志(萩市医師会長)、米澤文雄(萩市民病院長)、亀田秀樹(都志見病院長)

 パネルディスカッション

 基調講演の内容を踏まえ、中核病院で担っていきたいことや中核病院に期待することについて、それぞれの立場から意見を交わし、栗谷理事長からアドバイスをいただきました。

萩市民病院 米澤院長

〇萩医療圏にとって、救急、小児科、産科は必須。統合するならば、なるべく1つの病院にしなければ、二次救急の体制が維持できない。

〇最寄りの救命救急センターまで1時間かかるため、萩医療圏において、それに準ずる体制を考えなくてはならない。市民病院では萩・長門の心筋梗塞について常時受け入れる体制をとっており、中核病院でも継続していく必要がある。

〇病院と診療所との連携(病診連携)、病院と病院との連携(病病連携)に取り組んできたが、更に連携を進めるためにも、地域医療支援病院は必須と考える。

〇人口減少に伴う病床数の削減は避けて通れない問題。しかし、ITなどの医療環境の整備を行い、医療の質の向上を目指したい。

萩市民病院米澤院長

都志見病院 亀田院長

〇医療従事者の不足や高齢化という危機的な状況であるが、当院の災害拠点病院や地域がん診療病院、当圏域唯一の地域包括ケア病床などの機能は今後も必要であり、中核病院でも継続し、充実を図るべき。

〇市民病院の循環器内科や当院の脳神経外科など、萩・長門地域で唯一の機能は維持しなければならない。

〇統合し、両病院の機能を補い合うことで、今後更に医療の充実が図られる。

〇救急や在宅医療支援、感染症対策、産科の維持など、課題は多いが、地域医療への貢献を目指し、中核病院の形成に向けて取り組んでいきたい。

都志見病院亀田院長

萩市医師会 綿貫会長

〇中核病院の議論は開かれた場所でじっくりと行い、住民の声に耳を傾けてほしい。

〇広い視野を持ち、交渉・調整力のあるリーダーを迎えてほしい。

〇両病院の職員の意見を聞き、一体感を醸成してほしい。

〇中核病院は急性期に特化し、他の医療機関との連携や役割分担を担ってほしい。災害や感染症などの政策医療に対応できるような、地域の要となる地域医療支援病院に向けて整備してほしい。

〇中核病院の形成における産科、小児科の堅持は大前提であり、医師会も可能な限り協力していきたい。

〇医師会の若い医師からも中核病院を支えてみたいという声を聞く。今日の講演にもあったように、医師会が中核病院に出向して時間外の一次救急に協力するなど、外からの連携も必要ではないかと考える。

〇「地域医療なくして地方創生なし、地域医療なくして地方自治なし」という理念のもと、中核病院づくりを実現してほしい。

萩市医師会綿貫会長

栗谷理事長

〇萩医療圏の人口規模を考え、今後、萩医療圏で完結すべき医療とそうでない医療を整理し、どこかで折り合いをつけなければならない。経営も考えなければ、途中で立ち往生してしまう。

〇病床数を削減してもなお収益を上げるには、病床回転率を上げ、労働生産性を向上させなくてはならない。

〇労働生産性の低い病院には若手医師は集まらない。

〇医師会との関係は大変重要。当機構では「ふたり主治医制」を取り、登録患者の電子カルテを診療所の医師も見ることができる等、情報を共有し、退院後も連携をしっかり取れるようになっている。

〇高額な機械を病院が競って導入するような消耗戦を繰り広げては、地域の財政力を奪ってしまう。そうしないためにも、医療機能の再編や役割分担を進めていかなければならない。

〇統合にあたっては、まず運営形態をどうするかを一番に決めなければならない。今は、病床数の削減と運営形態の変更をすれば、国から財源的な支援を受けられる。有利な財政制度の裏付けをまずしっかりやって、リーダーを選んで、それからコンセプトを決めるとよい。

〇萩市民病院でもなく都志見病院でもない新たな病院をつくるというコンセプトが必要。

栗谷理事長

参加者の声(アンケート結果から)

〇中核病院は必要。市民が安心して生活できるよう中核病院をぜひ実現してほしい。

〇少しでも早く着手し、早急に中核病院ができることを望む。医療体制の再構築は待ったなしの課題であり、早く進めてほしい。

〇市民や医療従事者等の意見を聞きながら、しっかり検討してほしい。市民の意見をどう聞き取るのか考えてほしい。

〇医師や医療従事者の確保、育成に力を入れてほしい。

〇市の財政が心配。負債の多い病院同士が統合して大丈夫か。

〇道路ネットワークの充実を併せて考えるべき。病院が維持できなければ、他圏域の医療機関につなげる搬送ネットワークの整備をしてほしい。

〇(経営形態を地方独立行政法人とする場合、)リーダーを早く決めてほしい。リーダーシップのある、熱意あるリーダーを望む。リーダーを中心に両病院の融和を図ってほしい。

〇講師の話はとても参考になった。広く市民に聞いてほしい。