【第12回】 洗濯場・染め物・洗い張り・樋門



     国道262号線と交差した藍場川は、橋本町から御許町の一角を経て江向へと、鍵状に向きを変えながら流れていきます。この御許町の一角の藍場川沿いに、かつては近くの人が共同で利用する洗濯場があったそうです。
     洗濯場だった所には、かなり広い石段が設けられています。この辺りの藍場川の底には、水に入っての作業が容易にできるように、切石が敷き詰められているそうです。またかつては、現在マンションの敷地になっている辺りまで、切石敷きの広場になっていたといいます。20年程前までは、この洗濯場で、盥を据え、洗濯板を抱え、洗濯物を揉み洗いする人の姿が見掛けられたということです。
     橋本町や御許町の藍場川に程近い場所には、第二次世界大戦頃まで、染め物と洗い張りを生業とする家が三軒あったそうです。洗い張りとは、着物に仕立てる前の反物や、着物をほどいて反物状に縫い合わせた物を、洗って汚れ落とししたり、色止めや糊づけしたりすることです。これらの家々では、染料で染めた糸や布、洗った反物などを、近くの藍場川の流れで濯いでいたそうです。
     現在の藍場川からは、想像することが難しいと思います。しかしかつては、洗濯や濯ぎに利用できる程、藍場川の水は豊かで奇麗だったのです。
     洗濯場のすぐ下流では、比較的大きい樋門を見ることができます。ここだけでなく、藍場川沿いには、農業用水を引き入れるための樋門が、数多く設けられています。藍場川は、様々な形で、周辺の人々の生活にかかわっています。

    (市報はぎ1997年3月15日号掲載)