近年、萩市内の郡司鋳造所跡から、幕末期に長大な洋式大砲を鋳造した、国内唯一といわれる石組の遺構が発掘されました。
郡司鋳造所は、長州萩藩を代表する鋳物師(いもじ)の郡司家の工房で、江戸時代を通じて鍋や犂先(すきさき)、梵鐘(ぼんしょう)など、様々な金属製品を生産しました。ところが、幕末期に欧米列強に対する危機感が高まると、藩は同所を大砲鋳造所に指定し、洋式大砲の鋳造を命じたのです。
発掘された石組は、その当時に、日本の伝統的な技術によって洋式大砲をつくった遺構であることが判明しました。この研究成果は、萩博物館を核に活動する市民研究グループ「幕末長州科学技術史研究会」と、理系・文系の垣根を越えて全国の研究者が参加している「江戸のモノづくり」プロジェクトが連携したことにより生み出されたものです。
また現在は、石組遺構の移築保存が完了し、考古や歴史、科学技術史などの専門家から熱い注目を集めています。
本展覧会では、発掘された様々な遺物や、近年当館に寄託された郡司家秘蔵の文献などを通して、郡司家と鋳物づくり、および砲術との関係を明らかにします。そして、激動の幕末期に、日本の伝統的な鋳造技術によって洋式大砲をつくるという空前の大事業に、郡司家の男たちがどう立ち向かったか、その格闘の軌跡に迫ります。
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