平成27年7月に世界遺産に登録された、萩市の5資産を含む「明治日本の産業革命遺産」を紹介する「世界遺産ビジターセンター」と幕末維新期の歴史・科学技術史の貴重な実物資料を展示する「幕末ミュージアム」を開設
日本で初めて本格的なシリアルノミネーションという手法を用い、2015年世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。8県11市にわたる23の資産を一つの集合体として見ることにより、「19世紀の世界史の奇跡」と賞賛された日本の急速な近代化の軌跡を理解することができます。
その軌跡の中でも近代化の原点といわれる萩の5資産の位置づけや、吉田松陰がわが国の工学教育に果たした先駆的役割などを、映像やパネル、レプリカの展示などにより楽しく学ぶことができます。
幕末ミュージアムでは、日本でも有数の収集家である小川忠文氏(下関市在住)から萩市に寄贈された幕末維新期の歴史・科学技術史6,000点を超える資料のうち、特に貴重な実物資料を展示します。
これらの資料は、幕末維新動乱期に使用されたゲベール銃・エンフィールド銃などの鉄砲類や武具類などの軍事関係資料、江戸時代に日本で最初に作られた天文成象図(星図)などの天文関係資料、伊能忠敬が使用したものと同形の象限儀などの測量関係資料、エレキテルと称する電気式医療器具などの医学関係資料、江戸時代に作られた国産の顕微鏡などの科学技術関係資料など、その貴重さ、その展示数において日本屈指の、他に類を見ないスケールとなっています。
小川忠文氏から萩市に寄贈されたいわゆる「小川コレクション」は、江戸時代後期の科学技術史(軍事・天文・測量・医学)及び歴史に関する膨大な資料群である。器物と文献の両面から、わが国における科学技術の黎明を通観することができる。日本が明治以降、世界から「19世紀後半の奇跡」と賞賛された急速な近代化を理解するうえで、これほど優れたテキストは他にないであろう。萩反射炉や大板山たたら製鉄遺跡など萩の5つの資産が「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録された今、まさに時宜を得た展示といえるのではないだろうか。
国立科学博物館産業技術史資料情報センター
センター長 鈴木 一義