中津江橋 (なかつえばし)

■市報はぎ 平成7年(1995)4月15日号掲載



 中津江橋は松本川の最上流に位置し、川島と中津江とを結んでいます。最初に架橋された年代ははっきりしませんが、明治の初期には架けられていたものと思われます。その頃の写真を見ると、土橋で欄干もついていませんでした。当初、橋は民設で、通行料を徴収していたということです。昭和33年(1958)初めてコンクリート橋として架け替えられましたが、それまでは土橋のままで、洪水のたびに流失していたそうです。
 ところで、大正の初期頃の写真を見ると、川島側の橋のたもとに桜の若木が植えてあるのがわかります。実は、この桜は川島に住んでいた阿武松之助という篤志家が、植栽したものです。松之助は明治27年(1894)頃に、松本・橋本両川の川島堤一帯に桜を植えることを発起しました。松之助の呼び掛けで、川島にゆかりの深い山県有朋や桂太郎など560名の有志から、桜の苗木2150本の寄贈を受けました。明治30年から植え始め、およそ30年の歳月をかけて松本橋から橋本橋の間の川土手が桜の名所となりました。
 今もその頃の桜の古木が残っていますが、随分数が少なくなっています。往時、花見のシーズンにはボンボリが下げられ、夜桜を楽しむ人もいたそうです。当時の写真を見ると、まるで桜のトンネルのようです。桜を植えた松之助の顕彰碑は、藍場川の碑門のかたわらに建てられており、その隣の石碑には桜の苗木を寄贈した人々の名前が刻まれています。