利人橋 (りじんばし)

■市報はぎ 平成8年(1996)2月15日号掲載



 利人橋は瓦町と江向を結び、新堀川に架かっているコンクリート製の小さな橋です。現在の橋は、昭和35年(1960)に架けられましたが、橋のそばに「利人橋」と彫られた石碑が建っており、それによると明治22年(1889)に石橋として架橋されたことがわかります。江戸時代にはこの地点に橋はなく、おそらく明治維新前後には仮橋が架けられていたと思われます。明治3年(1870)の「萩町裁判控」によると、不便なため仮橋を本格的な常設の橋にしたいと願い出ています。この橋の架橋は、萩の住民の長年の願いだったのです。
 石碑には橋を建造した石工1名、発起人3名、賛成者33個人・6団体の名前も刻まれています。石工の杉本良介は、代々平安古の石屋町に居住していた萩藩の御用石工杉本家の7代目に当たります。賛成者の6団体は、萩町議員中・医学者中・三見村有志中・浜崎者力御中・度量衡御中・江向御中となっています。
 利人橋が架橋された明治22年は、市制町村制の公布により萩町が誕生した年に当たります。賛成者の中には、初代の萩町長をつとめた中村雪樹の名前も見られます。「大漢和辞典」によると「利人」とは「人に利益を与える」と記してあり、この橋の架橋が多くの人々の賛同を得、橋の完成によって萩町住民に大きな便益をもたらしたのでした。まさに、萩町の出発時にふさわしい命名の橋として利人橋の石碑は語り伝えています。